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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,540 字 · 319 頁
路地を出る時にふと見ると、お北の家には貸家の札が貼ってあった。気の弱い囲い者は化け物におどされて三日目に、早々ほかへ引っ越してしまったと家主が話した。
半七はそれから鍛冶屋の前へ行った。表からそっと覗いてみると、親方らしい四十ぐらいの男が指図して、三人の職人が熱い鉄挺から火花を散らしていた。その傍でぼんやりと鞴を吹かせている小僧は、この間ひどい目に遭った権太郎だと家主が教えてくれた。権太郎は四角張った顔をまっ黒に煤らせて、大きな眼ばかりを光らせている様子が、見るからに悪戯そうな餓鬼だと半七は思った。
「いろいろ有難うございました。まだ少しほかに仕かけている御用がありますから、二、三日中にまた参ります」と、半七は家主に別れて帰った。
ほかに手放すことのできない用を抱えていたので、二、三日という約束が四、五日に延びて、半七はその町内へ足を向けることが出来なかった。すると、四、五日のあいだに又いろいろの事件が生み出されて、町内の人たちを驚かした。
まず第一におびやかされたのは、町内の煙草屋のお咲という今年十七の娘であった。お咲は本所の親類へ行って、六ッ半(午後七時)頃に帰って来ると、冬の日はとうに暮れてしまって、北風が軽い砂を転がして吹いてゆくのが夜目にも白く見えた。