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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁
明治になってからも、下谷に雷が落ちたときに、雷獣を見つけて捉まえたということを聞きました。これもその雷獣のお話ですよ」
慶応元年六月十五日の夜は、江戸に大風雨があって、深川あたりは高潮におそわれた。近在にも出水がみなぎって溺死人がたくさん出来た。そのおそろしい噂がまだ消えないうちに、同じ月の二十三日の夜には又もや大雨が降り出した。今度は幸いに風を伴わなかったが、その代りにすさまじい雷が鳴りひびいて、江戸市中の幾ヵ所に落ちかかった。
そのなかで、浅草三好町の雷が尾張屋という米屋の蔵前に落ちて、お朝という今年十九の娘を殺した。重吉という若い男は一旦気絶したが、これは医師の手当てをうけて蘇生した。変死のうちでも、雷死は検視をしないことになっているので、お朝の死骸はあくる日のゆう方、今戸の菩提寺へ送られて式のごとく葬られた。
落雷で震死するのはさのみ珍らしいことでもないのは、それに対して検視の役人が出張しないのをみても判る。この事件も単に不幸なる娘の死にとどまって、何事もなく済んだのであるが、尾張屋の落雷に就いてこんな噂が伝えられた。
「あの雷の落ちたときには、大きい雷獣が駈けまわっていたそうだ」