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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(三)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁

青空文庫

しかし初めのうちは亀戸の方でもよくは判らず、どこか山の手の方角に火事があるそうだくらいの噂だったのですが、ともかくもこの大風に燃え出した火はなかなか容易に鎮まる気づかいはないと思ったので、亀戸からすぐに引っ返して来たのは夕七ツ半(午後五時)を過ぎた頃でしたが、もうその頃には青山から麻布の空が一面に真紅になっていました。三田の魚籃の近所に知り人があるので、丁度そこに居あわせた松吉という子分をつれて、すぐにまた芝の方面へ急いで行くと、ここに一つの事件が出来したんです」

前にもいう通り、この火事は青山の権太原から始まって、その近所一円を焼き払った上に、更に麻布へ飛んで一本松から鳥居坂、六本木、竜土の辺を焼き尽して、芝の三田から二本榎、伊皿子、高輪まで燃えぬけて、夜の戌の刻(午後八時)を過ぎる頃にようよう鎮まった。今日の時間にすれば僅かに六時間くらいのことであったが、何分にも火の足がはやかったので、焼亡の町数は百二十六ヵ町という大火になってしまって、半七が三田へ駈けつけた頃には、知り人の家などはもう疾うに灰になっていて、その立退き先も知れないという始末であるので、江戸の火事に馴れ切っている彼も呆気に取られた。