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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(三)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁

青空文庫

下手な奴に逢っちゃあ敵いませんよ」

「災難はいくら避けても追っかけて来るんでしょうね」と、老人は嘆息するように云った。

「自転車が怖いの何のと云ったところで、一番怖いのはやっぱり人間です。いくら自転車を取締っても、それで災難が根絶やしになるというわけに行きますまいよ。昔は自転車なんてものはありませんでしたけれど、それでも飛んでもない災難に逢った子供が幾らもありましたからね」

これが口切りで、老人は語り出した。

「今の方は御存知ありますまいが、外神田に田原屋という貸席がありました。やはり今日の貸席とおなじように、そこでいろいろの寄り合いをしたり、無尽をしたり、遊芸のお浚いをしたり、まあそんなことで相当に繁昌している家でした」

元治元年三月の末であった。その田原屋の二階で藤間光奴という踊りの師匠の大浚いが催された。光奴はもう四十くらいの師匠盛りで、ここらではなかなか顔が売れているので、いい弟子もたくさんに持っていた。ふだんの交際も広いので、義理で顔を出す人たちも多かった。おまけに師匠の運のいいことは、前日まで三日も四日も降りつづいたのに、当日は朝から拭ったような快晴になって、田原屋の庭に咲き残っている八重桜はうららかな暮春の日かげに白く光っていた。