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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁
した。千倉屋は旅絵師が想像していたよりも更に大きい店構えで、十人あまりの奉公人が忙がしそうに働いていた。伝兵衛の女房は七、八年前に世を去ったということで、家族は主人のほかに惣領息子の伝四郎と妹娘のおげん二人ぎりであった。伝四郎は今年二十歳の独身者で、これも父に似て骨格のたくましい寡言の男であった。おげんは二つちがいの今年十八で、色のすぐれて白い、ここらでは先ず眼につくような美しい眼鼻立ちを具えながら、どことなく薄のろいようにも見えるおとなしい娘であることを、毎日一緒に連れ立って来た澹山は知っていた。
妹の命を救ってくれたということを聞いて、兄の伝四郎も若い旅絵師をよろこんで迎えた。彼は父と同じように、いつまでもここに逗留していてくれと無愛想な口で澹山にすすめた。こうして一家の人々から款待されて、澹山の方でもひどく喜んで、自分の居間として貸して貰った離れ座敷を画室として、ここでゆっくりと絵絹や画仙紙をひろげることになると、伝兵衛も自分の家の屏風や掛物は勿論、心安い人々をそれからそれへと紹介して、澹山のために毎日の仕事をあたえてくれた。それらの仕事に忙がしく追われながら、六七八の三月はいつか過ぎて、ここらでは雪が降るという九月の中頃になった。