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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁
藤さんが来る筈ですが、すこし加減が悪くって、けさから寝込んでいるので、わたしがその使をたのまれて来ました。なあちゃんは昨日から一度もここへ来ませんかしら」
「いいえ、一度もお見えになりませんよ」
詞づかいは余ほど丁寧になったが、彼女は見識らない使の男にたいしてやはり油断しないらしかった。
「もし、おかみさん、あの壁にかかっているのはなんですえ」と、半七は伸び上がってだしぬけに奥をゆびさした。
残暑の強い朝であるから、そこらは明け放してあった。格子のなかの上がり口には新らしい葭戸が半分しめてあったが、台所と奥とのあいだの障子は取り払われて、六畳くらいの茶の間はひと目に見通された。助炭をかけた長火鉢は隅の方に押しやられて、その傍には古びた箪笥が置いてあった。それにつづいた鼠壁には、どこからかの貰いものらしい二、三本の団扇が袋に入れたままで逆さに懸かっていた。
「あの団扇ですかえ」と、お豊は奥を見かえった。
「いいえ、あの団扇の隣りに懸かっているのは……。あれはなんですえ。お草紙のようですね」
「うちの子供のお草紙です」
「ちょいと持って来て、見せてくれませんか」