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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(三)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁

青空文庫

「それはよく判りませんが、唯ぶらぶらしていたようでございます」と、お鉄は答えた。「なにしろ、土地にいた時も怠け者で、博奕なんぞばかりを打っていたような奴でございますから」

「その怠け者の安吉が今夜はなんの用で来たんだ」

お鉄も少し云い淀んでいるらしく、しばらくはうるんだ眼を伏せて肩をすくめていた。

「いや、これからが肝腎のところだ。お前もあいつを殺そうと思いつめた程ならば、それにはよくよくの訳がなけりゃあならねえ。おめえが殺そうと思ったあいつはもう死んでいる。おめえの念もとどいた以上、今さら未練らしく隠し立てをするにも及ぶめえ。あれはお前の情夫かえ」

「いいえ、決してそんなことは……」と、お鉄は急に興奮したように口唇をおののかせた。「あいつはわたくしの仇でございます」

「その仇のわけを聞こうじゃねえか。仇なら殺しても構わねえ。一体それは親の仇か、主人の仇か、おめえの仇か」

「主人のかたきで、わたくしにも仇でございます」

かれの眼からは止め度もなしに涙が流れ落ちた。お鉄はいよいよ興奮したように云った。

「もうどうしても勘弁がならなくなって、いっそ殺してしまおうと思いました。