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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(三)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(三)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,612 字 · 405 頁

青空文庫

しかもそれに対するお鉄の返事は意外であった。

「はい、若いおかみさんの生まれ年を知っていますので……」

「生まれ年……」

「親分さんの前ですから申し上げますが、おかみさんは生まれた年を隠しているのでございます」

と、かれは思い切ったように云った。

加賀屋の嫁のお元は弘化二年巳年の生まれと云っているが、実は弘化三年午年の生まれであるとお鉄は初めてその秘密を明かした。単に午年ならば仔細はないが、弘化三年は丙午であった。この時代の習慣として、丙午の年に生まれた女は男を食い殺すという伝説が一般に信じられていたので、この年に生まれた女の子は実に不幸であった。生んだ親たちも無論にその不幸を分かたなければならなかった。お元も不幸に生まれた一人で、なんの不足もない豪家の娘と云いながら、その生まれ故郷ではとても相当の嫁入り先を見いだすことが出来そうもなかった。さりとて余りに身分違いの家と縁組するわけにもいかないので、親たちから土地の庄屋にたのんで、人別帳をうまく取りつくろって、午年の娘を巳年の生まれと書き直して貰って置いた。それで表向きは先ず巳年で通るのであるが、土地の者は皆ほんとうの生まれ年を知っているので、親たちもいろいろに心配して、結局その嫁入り先を、遠い江戸に求めたのであった。