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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(二)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(二)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,865 字 · 432 頁

青空文庫

本来ならば一七日の祈祷で当然その禍いを祓い得べきであるのに、今度の祈祷に限って不思議にその験がみえない。更に二七日、三七日、四七日と祈りつづけても、やはりその験のあらわれないのは甚だ不思議に思っていたところが、今になってその仔細が初めて判った。当人の久次郎どのが汚れた心を持っていたからである。久次郎どのは毎夜かかさず通って来るのは、まことの心からの信心ではない。実はお姫様に懸想していたのである。現にゆうべの祈祷の休息のあいだに、彼はお姫様をとらえて猥らなことを云い出した。実に言語道断の不埒である。

お姫様は勿論それを取り合われる筈はなかった。持っていた幣束で彼の面を一つ打ったままで、無言で奥の間へはいってしまわれたが、それを知った拙者はすぐにその場へ踏み込んで、久次郎の不埒をきびしく叱って、今後決して、参ることは相成らぬと襟髪をつかんで表へ突き出してしまった。久次郎どのは何と云っているか知らないが、事実は全くこの通りであって、お姫様を涜そうとするのは神を涜そうとするも同じことである。久次郎どの如き言語道断の不埒者はもとより相手にはならない。改めておふくろ殿にお掛け合いをいたすために、こんにち罷り越した次第であると、式部は形を正しゅうしておごそかに云った。