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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(二)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(二)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,865 字 · 432 頁

青空文庫

と、婆さんは苦々しそうに云った。

「いや、ありがとう」

あぶない溝板を渡りながら路地の奥へはいってゆくと、甲走った女の声がきこえた。

「へん、意気地もないくせに威張ったことをお云いでないよ。槍突きぐらいが怖くって、夜のかせぎが出来ると思うのかえ。おまえが盆槍で、向うが槍突きなら相子じゃないか。槍突きが出て来たら丁度いいから、富さんと二人でそいつを取っ捉まえて御褒美でもお貰いな、嬶を相手に蔭弁慶をきめているばかりが能じゃないよ。しっかりおしな」

このあいだの晩、槍突きに出逢って以来、辻駕籠屋の勘次は怯気づいて商売を休んでいるらしかった。女房の悪態の途切れるのを待って、七兵衛はそっと声をかけた。

「ごめんなさい」

「誰ですえ」と、女房は八中りの尖った声で答えた。

「勘次さんはお家ですかえ」

空駕籠を片寄せてある土間に立つと、長火鉢の前にあぐらをかいていた勘次が首をのばした。彼は三十四五の、背の低い、小ぶとりに肥った男で、こんな商売に似合わない、人のよさそうな顔をしていた。

「勘次はいますよ。こっちへおはいんなせえ」

「朝っぱらからお邪魔をします」と、七兵衛は上がり框に腰をかけた。