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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
「どうもありがとうございました。今のわたくしとしては別にお礼の致しようもございませんが、これからは蔭ながらおまえさん方夫婦の身の上を守ります」
かれは足音もしないように表へ出て、その姿は五月の闇に隠されてしまった。それを見送って、お徳はほっとした。かれは夢をみているのではないかとも疑ったが、だんだんに落ち着いてかんがえると、怪しい女はどうも江戸川の水の底から抜け出して来たらしく思われてならなかった。それが普通の人間ならば、いかに夢の告げがあったからといって、人の家の魚をただ取ってゆくという法はない。それに対して相当の償いをしてゆくべき筈であるのに、今のわたくしとしては別にお礼のしようもないと彼女は云った。その代りに、蔭ながらお前たち夫婦の身の上を守るとも云った。そんなことは普通の人間の云うべき詞ではない。かれはおそらく一種の霊あるものであろうと、お徳は想像した。そうして、かれが再び引っ返して来るのを恐れるように、お徳は表の戸に栓をおろした。
「それでもすなおに鯉をわたしてやってよかった。うっかり逆らったらどんな祟りを受けたかも知れない」
禁断の魚を捕るということがすでに逃がれがたい罪である。