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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

帳場には四十四五の女房が坐っていた。それが伊太郎の母のお国であろうと、半七は想像した。さらに引っ返して指ヶ谷町へゆくと、そこには伊丹屋という酒屋の暖簾が眼についた。ここが伊太郎の嫁の実家である。半七はずっと店へはいった。

「もし、お前さんは旦那ですかえ、番頭さんですかえ」と、半七は帳場にいる四十前後の男に声をかけた。

「はい。わたしは番頭でございます」と、男は帳面の筆をおいて答えた。

「旦那はお内ですかえ」

「いえ、こちらは女あるじで……」

「じゃあ、岡崎屋と同じことだね」

「左様で……」と、番頭はやや不審らしく半七の顔をみつめた。

「息子さんは無いのかね」

「息子はございますが、まだ肩揚げが取れませんので……」

「娘さんは幾人いるね」

「二人でございます」

「いや、こりゃあわたしが悪かった」と、半七は笑いながら云った。「だしぬけに押し掛けて来て、よその家の人別を調べるから、お前さんにも変な顔をされるのだ。実はわたしはお上の御用を聞く者で、すこし調べる筋があって来たのだから、迷惑でもおかみさんに逢わしておくんなせえ」

御用聞きと名乗られて、番頭も俄かに態度をあらためた。