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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
「おれは――お前を信用していない。お前は司令部へ馳けて行って、そして俺のことを言わないとも限らんから、な」
高城の頬がぱっと紅くなったが、すぐ悲しみの色が瞳の中にあふれて来た。必死に打ち消すように身体をよじりながら、
「そんなことはありません。中尉殿」
呻くような声であった。
「私は後から参ります」
宇治は黙って腰から拳銃を抜いた。そして安全装置を外した。ずしりと掌に重いブロオニングを握りしめた。
「では」彼は先に立って歩き出しながら、「おれが先に行く。ついて来い」
宇治は背後で高城の激しい呼吸遣いをききながら、黒い岩質の道を踏んだ。遥か下から歌声が浪のように高まり、小さな数多の姿が一斉に律動した。底にうごめく人々の様子はむしろ楽しげに見えた。一歩一歩が身を刻むようであった。全身の神経を背後に集中させてあるいた。高城がどんな表情しているか判らない。もし声を立てたり、崖をすべり降りたりすれば、直に射殺するつもりである。殺してしまえば、あとの言い逃れはどうにでもなる。背後の跫音をひとつひとつ耳に捕えながら、宇治の拳銃を握る掌はやがて冷たい汗にぬれて来た。
目標の巨樹まで来た。