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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁
そこに体をすべり込ませ、舟板を元に戻した。そして体を胎児のように縮める。濡れた腿がくっつき合う。低く呟いた。
「これで当分、安心だ」
舟底は暗かった。かすかな光が縞になって、さし入って来る。やがて眼が慣れて来る。船虫が何匹も這い廻っている。長い触角をぴくぴく動かしながら、しきりに走る。その中の何匹かが五郎の体にとりついて、這い登ったり降ったりする。別に不快な感じではない。ただ顔を這われると、くすぐったい。額や頬のは手ではらい落し、唇近くに来たのは、フッと呼吸で吹き飛ばす。しだいに五郎は眠くなって来た。ちぢこまった姿勢のまま、意識以前の状態に戻りかけていた。記憶はそこで跡切れる。――
五郎は、ふっと眩暈からさめた。秋の強い日に照らされて、貧血を起したらしい。五郎は靴を穿き、弁当と瓶を持って立ち上り、防風林の中にふらふらと入って行った。あたりに誰もいないということが、安心でもあり、また無気味である。松の木の露出した根の、適当なのを選び、上衣をたたんで乗せた。それを枕にして、長々と横たわった。
眼をつむる。うとうとと眠りに入った。
どのくらい眠っていたか判らないが、何だか首筋や手の骨の痛さで眼が覚めた。