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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

〈誰かがおれに理不尽なことをしている〉

不機嫌な感じがあって、しぶしぶ眼を見開いた。しばらく木の梢や空を眺めながら、ここはどこだろうと考えていた。そしてゆっくりと上半身を起した。

「ああ。ここで眠っていたんだな」

それが納得出来るまでに、三十秒ほどかかった。誰も理不尽なことをしたわけではない。木の根の固さと不自然な体位が、五郎の体に痛みをもたらしたのだ。彼は手を屈伸し、肩をたたき、体操の真似ごとをした。ふと見るとサイダー瓶は倒れ、栓のすき間からこぼれて砂にしみたらしく、内容は半分ぐらいになっていた。こぼれたって、別に惜しいとは思わない。五郎はそれを拾い上げ、また一口飲んで、もうこぼれないようにしっかり栓をした。そして立ち上る。

「昨日も今日も、昼酒を飲んだな」

五郎は歩き出しながら、大正エビのことを思い出した。大正エビはアル中患者だ。まだ若くて、すっきりした顔で、付添婦や看護婦によくもてた。アル中患者なんてものは、アルコールを断たれると、禁断症状を起してばたばたあばれるのかと思っていたが、そうではない。けろりとしている。

「酒、欲しくないか?」

五郎は聞いたことがある。