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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

しかし症状としては、昨日はまだよかった。不安や憂欝は、ほとんどなかった。今日はどうも具合が悪い。ぼんやりと『死』が彼の心に影をさしている。この長い砂浜に、独りでいるのがいけないのか。

橋を渡って、また二キロほど歩いた。疲労がやって来た。砂浜は足がばくばく入るので、ふつうの平地を歩くよりずっと疲れるのである。

大きな流木が打ち上げられていた。そこまでたどりつくと、五郎はほっとして腰をおろし、しばらく海を眺めていた。眺めていると言うより、にらんでいた。流木はずいぶん浪に揉まれたらしく、皮は剥げ、枝もささらのようになり、地肌は白く乾いていた。

「このままで――」

と五郎は口に出して言った。

「振出しまで戻るか。それとも前非を悔いて、病院に戻り――」

五郎は栓を歯でこじあけ、残りのすべてを咽喉の中に流し込んだ。飲んだらなお気持が荒れる。それはよく判っていたが、早くけりをつけてしまいたいという気分が先に立つ。このまま服を脱いで裸になり、沖に泳ぎ出す。くたびれて手足も動かなくなるまで泳ぐ。するともう浜には戻れない。その想念が、さっきから彼を誘惑している。海がおいでおいでをしている。