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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《桜島・日の果て・幻化(さくらじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 169,810 字 · 345 頁

青空文庫

聞いてみると、六名は皆補充兵である。回天や震洋艇の修理のために派遣されるのだと言う。

「桜島には、震洋がもう来ているのかね」

「判りませんです」

答えたのは一番年嵩の一等兵である。四十は既に越した風貌である。身体に合わない略服を着て、見すぼらしく見えた。衣嚢も小さい。佐世保海兵団で焼け出されたため、ごく僅かの衣類しか支給されなかったと言う。私の衣嚢の重そうなのを見て、しきりに自分のものと交換してかつごうと言って聞かなかった。善良な型の人物のようであったけれども、軍隊の仕来りに忠実であろうとするその愚直さが、私には何となく重苦しかった。

「俺のは俺が持つ」

素気なく私はそう言い、あとは黙って路を歩んだ。停留場に着いた。小さな電車に乗って暫く走ったと思うと、すぐ降された。爆撃された為、電車は此処迄しか通じないのだ。再び列をつくって、今度は舗装路を歩み出した。

鹿児島市は、半ば廃墟となっていた。鉄筋混凝土の建物だけが、外郭だけその形を止め、あとは瓦礫の散乱する巷であった。ところどころこわれた水道の栓が白く水をふき上げていた。電柱がたおれ、電線が低く舗道を這っていた。