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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 頁

青空文庫

「なあに――」

と、俊亮は一旦火鉢のはたに坐って、ひろげたままになっていた手紙を巻きおさめながら、

「何か、次郎にやるものはありませんかね。」

「次郎に? ありませんよ。」

「食べものでもいいんです。……もしあったら、お祖母さんからやっていただくといいんですが……」

お祖母さんは、じろりと上眼で俊亮を見た。それから、つとめて何でもないような調子で言った。

「飴だと少しは残っていたかも知れないがね。でも、珍しくもないだろうよ。毎日次郎にもやっていたんだから。」

俊亮は、もう何も言わなかった。そして、巻煙草に火をつけて、吸うともなく吸いはじめた。すると、その時まで默っていた恭一が、お祖母さんの方を見ながら、用心ぶかそうに、

「僕、次郎ちゃんに、こないだの万年筆やろうかな。」

「歳暮に買ってあげたのをかい。」

と、お祖母さんは、とんでもないという顔をした。

「ええ。」

「お前、どうしてもいると言ったから、買ってあげたばかりじゃないかね。」

「僕、赤インキをいれるつもりだったんだけれど、黒いのだけあればいいや。」

「また、すぐ買いたくなるんじゃないのかい。」

「ううん、色鉛筆で間にあわせるよ。