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えどげいじゅつろん
江戸芸術論
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《江戸芸術論(えどげいじゅつろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,130 字 · 167 頁
の
月かくす花のこえだのしげきをば
きりたくもありきりたくもなし
こぎ出す船にたはらを八つみて
四こくはうみの中にこそあれ
等の例を掲げたり、生白庵行風が『古今夷曲集』を見れば宗鑑貞徳ら古俳人として名ありしものの狂歌を載せて作例となせるもの多し。いづれも両者甚相近きを知らしむるものならざらんや。
元禄以前にありては俳諧は決して正風以後におけるが如く滑稽諧謔の趣を排除せざりしなり。余は滑稽諧謔を以て俳諧狂歌両者の本領なりと信ずる也。滑稽諧謔は実にこの両詩形の因りて以て発生し来りし根本の理由にあらずして何ぞや。そもそもわが邦人固有の軽妙滑稽の性行は仏教の感化によりて遠く戦国時代に発芽したり。南北朝以来戦乱永く相つぎ人心諸行無常を観ずる事従つて深かりしがその厭世思想は漸次時代の修養を経てまづ洒脱となり次で滑稽諧謔に慰安を求めんとするに至れり。一休禅師の逸事長く世人を喜ばしめたるもこれがためにあらずや。兼好法師が『徒然草』には既に多分の滑稽を帯び来れり。猿楽を見るに謡曲の厭世的傾向に相対して狂言の専ら滑稽を主材となしたるは最もよく我が所論を証明するものなり。