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えどげいじゅつろん
江戸芸術論
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《江戸芸術論(えどげいじゅつろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,130 字 · 167 頁
されば朝市のふるものあつかひよと人いふめれど、たゝにやはとて、長嘯子のえらび玉へる諸虫歌合せの跡を追て、恋のこゝろのざれ歌をのばへ侍るに、兎角して夜もふけ侍し、江山風月常のあるじなければ、地しろをせむる大屋もあらねど、草のむしろのまらうどゐはなく、虫こそあるじなれとて、露けき方にうち向ひて、ねもころにぬかづきて立ぬ、これなん三百六十のひとつなかまのいやなりけらし
これ宿屋飯盛が文にして画賛に尻焼猿人(抱一)以下天明の狂歌師が吟咏を採録したり。狂歌絵本は当時最も流行し最も美麗なる製本をなせり。然れどもその起源は既に浮世絵発達の当初にあり。余いまだその書を見る事能はずといへども天和年間菱川師宣が絵本『狂歌旅枕』といふものありといふ。元禄年代には鳥居清信が『四場居百人一首』の如き享保年代西川風の『絵本鏡百首』の如きまた長谷川光信が鯛屋貞柳の狂歌に絵を添へたる『御伽品鏡』の如きものあり。
天明六年北尾政演が描ける『狂歌五十人一首』は天明狂歌の萃を抜きたるものその板画と相俟つて狂歌絵本中の冠たるものなり。今その中の数首を転載しいまだ狂歌の趣味を知らざるものの参考に供せんとす。