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かいじょうのみち
海上の道
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《海上の道(かいじょうのみち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 頁
漁が一つの生業として成立した順序は、日本のような国ならば、簡単に社会科でも教えることができる。最初は魚の方から群をなして押寄せてきて、ほしいと思う者には誰にでも取られてくれた。国の端々には今でもそういう場所がまだ少しは残っている。それを僅かな人の手で、及ぶ限り多くすくい揚げ、上手に分配しようとしたのが漁業の始まりだが、農とちがってその歴史はごく新らしく、結局は魚を遠くの沖の方へ追い払い、是からの海辺の生活を、際限もなく変化させようとしているのである。
南の海上のザンの魚(儒艮)の物語と対立して、東日本の荒磯にはアシカ・アザラシ・ミチの寝流れなどの話がもとは多かった。文字の教育が都府とその周辺に偏在した結果、是らはすべて永遠に、記録の外に佚散しようとしている。これを保留し且つ前代の考察に取り入れてゆく労苦は、今も若干の痕跡を伝えている網や釣縄の比ではない。そのために人はしばしば現代の空気の中に、遠い寂寞の世を推理しようとするのである。寄木・流木の言い伝えなどは、これに比べると遭遇がやや多く、また若干の文献にも恵まれているが、なお我々は国内の山野が、かつて巨大の樹木をもって蔽われ、それが次々と自然の力によって、流れて海に出ていた時代を、想像してみることができなくなっている。