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かいじょうのみち
海上の道
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《海上の道(かいじょうのみち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 頁
世に伝わらぬ旧儀
世に伝わらぬ旧儀
朝廷の大嘗に天神地祇を御祭りなされるということを、始めて公けに明示したのは、もし私が誤っておらぬならば、職員『令義解』の神祇官の条に、「大嘗謂嘗新穀以祭神祇也、朝者諸神之相嘗祭、夕者供新穀於至尊也」とあるのがそれかと思われる。この神祇は勿論天神地祇であって、ある定まった大神のことをいうのではない。天武天皇紀の五年十月丁酉の条に、「奉幣帛於相嘗新嘗諸神祇」とあったのが、中間僅か一百五十年余のほどに変移して、まず「嘗」という語の語感が改まった。嘗はキコシメス、すなわち天子に今年の稲穀を初めてさし上げることだったのが、爰ではそれを中心とした前後一切の行事を謂うようになっており、次には幣帛を国内の諸社に送ることまでを、祭と誌して怪しまぬようになってしまったのである。「祭」という漢字は、その本国においては、今古を一貫して地の神の奉祀を意味する語であった。それを我邦のみは敬祭という語も古く、一切のマツリ、マツラフワザに宛てて用いることになったのも、おそらくはこの誤解の導きであろう。
ただし右の「職員令」の個条は、本来は神祇官の職分を列挙せられたもので、神祇官はもとより皇祖以来の神祇行政、すなわち国内信仰の綜攬統合だけに参劃すべきものであった。