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かいじょうのみち

海上の道

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《海上の道(かいじょうのみち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 頁

青空文庫

宝貝の需要がさまで痛切ならず、人がそのために身命を賭し、怒濤を乗り切るまでの大きな刺戟がなくなったのは、徐福のローマンスよりもさらに前のことであろう。人がその島をわが島と呼んで、安んじて住むようになれば、やがては生産の地が足りなくなって、行きやすい隣の島を物色することは、是は水平線外の冒険とは話がちがう。一番大きな促迫は、稲を作る適地の欠乏であったかと思う。漁獲は必ずしも定住を必要としなかったからである。珊瑚礁の隆起でできたような平島では、稲を生育せしめるような浅水の地はそう多くはなかった。南方の諸島では、通例小さな水面をコモリと呼んでいる。旧日本の方にもコモリヌという語があり、現在もなお二、三の土地に、方言として残っている。南島のコモリには入江の奥などにあって、海の水の通うものが多いが、是も少しの土功を加えて外側を断ち切り、降雨を待って水を入れ替えて、小規模なる浦田湊田を設けることは、こちらでも例の多いことである。ただしこういうのは多くは灌漑の設備がなく、したがって旱の年にはかえってまず苦しまなければならぬので、むしろ低湿な沼地を選び、よそでは旱魃で困るような年を、待っているような傾きが生じた。