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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスV――少年の王国(こぞうのゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 頁
」
こう云って、少年の肩を撫でながら、じっと凝視すると、大抵の子供は身動きが出来なくなって、べそ掻き掻き承知をする。
手分けをして廻った三人の黒奴は、二十分程の間に六七人の少年を狩り出した模様である。彼等のうちの四人は、小学校の制帽を冠った十三四の生徒である。あとの二人は、いずれも己と同年配の丁稚のような服装をして居る。隣の酔漢の蔭に身を屈めて、一生懸命に姿を隠して居た己はもう大丈夫だろうと思って、ほっと安堵の胸をさすった。そうして、こわごわながらそっと顔を揚げると、意外にも黒ん坊はまだ其処につッ立って居る。彼は子供を引きつれて、舞台の方へ赴こうとする瞬間であったが、咄嗟に己の憶病らしい瞳が、彼の視線にかち合ったのである。己は直ぐに、「もうだめだ、もう助からない。」と、思った。
案の定、彼はじーッと己を睨みつけたまゝ寄って来た。
「あなたも来る。さああなたも。」
と云って、彼は軽く顎をしゃくって、ぽんと己の肩を叩いた。
己はいつの間にか、すっかり覚悟がついて居た。「そんなに恐ろしい筈はない。どんな真似をされるか試してやれ。」と云うような気にもなって居た。己の胸には、慟悸が激しく鳴って居たが、それは恐怖の為めよりも寧ろ好奇心の為めであった。