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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスV――少年の王国(こぞうのゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 頁
―――今しも彼の受持ちの生徒等が、二た組に分れて戦争ごっこをして居るのを発見した。其れだけならば別に不思議でも何でもないが、その二た組の分れ方がいかにも奇妙なのである。全級で五十人ばかりの子供があるのに、甲の組は四十人ほどの人数から成り立ち、乙の組には僅かに十人ばかりしか附いていない。そうして甲組の大将は例の生薬屋の忰の西村であって、二人の子供を馬にさせて、其の上へ跨りながら、頻りに味方の軍勢を指揮して居る。乙の組の大将はと見ると、意外にも新入生の沼倉庄吉である。此れも同じく馬に跨って、平生の無口に似合わず、眼を瞋らし声を励まして小勢の部下を叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)しながら、自ら陣頭に立って目にあまる敵の大軍の中へ突進して行く。全体沼倉は入学してからまだ十日にもならないのにいつの間にこれほどの勢力を振うようになったのだろう。貝島は其の時ふいと好奇心を唆られたので、両頬に無邪気な子供らしい微笑を浮べながら、さも面白さに釣り込まれたような顔つきをして、尚も熱心に合戦の模様を見守って居た。と、多勢の西村組は忽ちのうちに沼倉組の小勢の為めに追い捲くられて、滅茶々々に隊伍を掻き乱された揚句、右往左往に逃げ惑って居る。