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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁

青空文庫

「目塗りは最前に充分いたした筈ではないか」

「中のやつが暴れくさッたで、この通り、破れが来てしまったのじゃ」

「げッ、それでは、息を吹ッ甦したのか」

「そうらしいぞ。竈の肌へ、耳をつけて見さッしゃい、中で、呻いているだから」

「ウーム……何かそんな物音がするようだ」

「どれ、どれ」

好奇な眼をした武士たちは、代る代るに、竈の肌や火口へ耳を寄せ合った。

なるほど、作兵衛のいう通り、中では烈しい物音が暴れている。異様な呻き声が洩れる。

「さ、退いた退いた。愚図愚図しておると、この竈を壊されてしまうわい」

と、作兵衛は、忌々しそうに、手を振って、侍たちを、退けた。

郷左衛門は、叱咤した。

「老爺! 早くせい! 火を入れろッ」

「合点でがす」

枯枝の先に襤褸をつけて、どっぷりと油を浸し、それを、火口から幾つも抛りこんで、ぱッと、燐木の焔を投げこんだ。

ぱちッ、ぱちッ、ぱちッ……とたちまち焔は竈の胎内を真っ赤にした。

一同は、生唾をのむ。

さすがに、幾ら悪人でも、余りいい気持はしないのであろう、郷左衛門も顔を硬直させて、じっと、鋭い眼をすえていた。

ごうッと、竈は巨大な焔の心臓を膨らませて、火口から強く風を吸いこんだ。