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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁
「郁次郎様のあのお始末、こうして、老先生のお顔を見ると、涙ばかりが……涙ばかりが先に立って、この胸が、張り裂けるようにござります」
「はて、分らんぞ。伜の始末とは」
「あ、あの……」
「何のこッた。はっきり申せ」
「指切りの郁次郎と、世上の評判も、もうお耳には入っていることと存じますが」
「こ、これッ加山、指切りの郁次郎とは、それや一体、なんのこッちゃ」
「ではまだ、何事も、老先生にはご存じないので」
「この鶉坂から一歩も出ぬわしじゃ。なにか、郁次郎の身に変事があったのか」
「あったのかどころではござりませぬ。女笛師のお雪を殺したのも、江の島の巫女殺しも、みな、郁次郎殿の所業と睨まれ、ご本人もまた、それに相違ないと自白をなされて、昨日、江戸表へ差し立てと同時に、南町奉行所の仮牢へ入牢なされました」
「げッ」
老先生は、喉を破るほど絶叫して、
「ほ、ほんとか? それは」
と、驚愕にふるえて、倒れそうになった。
耀蔵は、その顔いろが、死者のように蒼ざめたのを見て、
「老先生、お危のうござります。どうぞ、お気をたしかにして下さい。お気を、お気を」
「ウウム、だ、だい丈夫だ加山」