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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁

青空文庫

玉枝の烏爪は見届けた。まずそれだけで結構としておこう」

「ですが、老先生、もう今日は八月の三日ですぜ」

「そうだ、百日の期限も、あと十二日になった」

「一体どうなさるおつもりなんで……」

「天なり命なり、今に、加山から何とか吉報があろう。それの便りが来ないうちは、いかに江漢でも、手の下しようがない」

「あの耀蔵さんも、一体、何をぐずぐすしているんだろう」

こう言い合った翌々日である。

加山耀蔵、波越八弥、二人は江戸へ帰って来た!

すぐその翌々日は、前黄門公、松平龍山公微行の列が江戸表へはいった。

相前後して、たった二日ちがいである。

だが、その黄門の龍山公は、どこを宿所に定められたか、まだ、辰の口へも届け出がない。江戸の上屋敷も下屋敷も、あるにはあるが、十何年間も閉めっ放しで、到底、一時の宿とするにも足りない荒れかたである。

奉行所では、しきりに、たずねていた。

それは、南町奉行自身ではなく、所内にいる羅門塔十郎が、龍山公の出府を機会に、ぜひ拝謁したいというので、あっちこっちと訊き廻っているのであった。

東儀与力は、またこのところ、老先生のすがたが、消えたように江戸から見えなくなったので、しきりとそれを気にしては、