輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《狂い凧(くるいだこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 頁
中をのぞくとモンペ姿の中年の女が、コンロに鍋を乗せ、何かぐつぐつと煮ていた。
「ちょっとおうかがいしますが――」
栄介は戦闘帽を取った。
「この先に葬儀屋さんがありましたね。あの家族はどちらに行かれたか――」
「さあねえ」
女は栄介の方に顔を向けた。
「ここらへん、いっしょに焼けちまったんでねえ。何でも話によると、御主人は焼夷弾の直撃でなくなられたようですよ」
「直撃でねえ」
むっつりした主人の表情を、彼は思い出した。
「家族たちは?」
「さあ。実家にでも帰ったんじゃないかしら」
女は立ち上って壕舎を出て、栄介に近づき、しげしげと彼の顔に見入った。
「そうだ。あんたはたしか、昭和十年頃、あそこで働いてた人だね。面影が残ってるよ」
「いえ。違いますよ」
栄介は二、三歩後退した。女はいぶかしげに言った。
「かくさなくてもいいじゃないの。あたしゃ覚えてるよ」
あれは弟だと説明するのも面倒くさいので、彼はあわてて頭を下げ帽子をかぶった。
「どうもありがとうございました」
女の視線をひりひりと背中に感じながら、栄介はだらだら坂を急ぎ足で登った。
「そんなわけだから、幸伯父はそちらと交渉はないと思う」