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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《狂い凧(くるいだこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 頁

青空文庫

「うん。いや。も一人の兄貴のことも、聞いたことがある。共産党になって、病院で自殺したんだってね」

「自殺?」

栄介は思わず大声で反問した。

「自殺したって?」

「あんた知らないのかい。そりゃ言うんじゃなかったな」

城介が加納に話したのは、その自殺の方法であった。丁度その頃、便所で首をくくって死んだ兵隊があり、それからその話になった。

「おれの長兄も縊死したんだ。ただしぶら下りじゃない」

ベッドの鉄枠にネクタイを結び、頸を突っ込んで、体を床下に落下させた。絞首刑と同じやり方である。その方が見苦しくないし、頸骨が砕ける可能性もあって、苦痛がすくないという城介の説であった。

「ほんとかねえ」

栄介は首をかしげた。城介がとっさにつくり話をしたのか、といぶかった。竜介の死についての記憶は、ただ暗欝な肺病棟の記憶だけである。おそらく城介のもそれだけであろう。栄介と城介は、故郷においても東京においても、ほとんど長兄について話を交わすことがなかった。あるとしても、

「竜兄さんが今生きてりゃ、いくつになるのかな」

という程度で、つまり二人にとって竜介は、すでになじみのない過去の人であった。