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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《狂い凧(くるいだこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 頁

青空文庫

宿舎は小学校で、そこへ到着した時に、婦人会の面々がやって来たのだ。各教室を廻り、甘味品を支給する。婦人会長らしい五十女が、恩着せがましいような、いやがらせのような言い方をしたので、加納たちは少しむっとした。彼女らも軍隊ずれをしていて、将校は大切にするが、下士官兵に対しては、子供扱いにする気配があったのだ。城介が立ち上って、次のような意味の発言をした。

「自分たちはこんなヨウカンの如きものは食べ飽きている。バナナとかパイナップルとか、そんな果物を持って来てもらいたい」

向うもぐっと来たらしい。バナナなどというのは、当地では俥夫馬丁が食うもので、皇軍ともあろうものががつがつと食べるものでない。少時いささか険のあるやりとりがあって、座がしんと白けた。

「城介君は頭にかちんと来たんだね。眼がきらきらと光って――」

加納の言葉を聞きながら、私は東京の遊園地での城介のあの眼を思い出していた。何か思いつめたような、凶暴にさえ見えるあの眼の動きを。

「おい。皆」

城介は振り返って呼びかけた。

「ヨウカンなんかに手をつけるんじゃないぞ。おれがバナナ屋を呼んで来る」

城介は教室の窓から飛び出し、街からバナナ売りを連れて戻って来た。