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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
「こりゃ、積もるぞ。あしたは止んでくれればいいが……。」
こんなことを言いながら、人々は門前で思い思いに別れた。神南佐太郎、堀口弥三郎、森積嘉兵衛、この三人はおなじ方角へ帰るのであるから、連れ立って鬼婆横町を通り抜けることになると、西から東へ抜ける狭い横町は北風をさえぎって、ここらの雪は音もなしに降っていた。南側の小屋敷の板塀や生垣はすべて白いなかに沈んで、北側の大溝も流れをせかれたように白く埋められていた。三人がつづいて横町へはいると、路ばたの大きい椎の木のこずえから、鴉らしい一羽の鳥がおどろかされたように飛び起った。
神南と堀口は先刻探険に来て、妖婆の姿がもう見えないことを承知していたが、それでもこの横町へ踏み込むと、幾分か緊張した気分にならないわけにはいかなかった。森積も同様であった。隙間もなく降る雪のあいだから、行く手に眼を配りながらたどって行くと、二番目に歩いている堀口が、何物にかつまずいた。それは足駄の片方であるらしかった。
「これは石川がさっき脱いだのかも知れないぞ。」
言うときに真っ先に進んでいる神南は、小声であっと叫んだ。
「あ。又あすこに婆らしいものがいるぞ。