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じけいろく

自警録

新渡戸 稲造

線上閱讀新渡戸 稲造《自警録(じけいろく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 168,224 字 · 328 頁

青空文庫

一時の勝利と永久の勝利

しかるに社会がさらに進歩し礼をもって治められる時代に到達したならば、礼の最も厚き人が最高の勝利者となる。

いかなる世においても、種々なる形で競争が行われる。あるいは商業、あるいは学術研究、あるいは芸術、社交、その他いかなる階級にもそれぞれ競争は絶えぬ。して競争あれば必ず勝者と敗者がある。一口に勝者という者の中にも一番強い者を相手にした者は一番偉い勝者である。また同じく敵と称する者の中にも種類が数多ある。強きもあれば弱きもある。赤鬼もいれば青鬼もおろう。してあらゆる種類の敵に勝つ者は一番偉い勝者である。時には敵とは称せずとも吾人の勝つべき相手もある。それは親兄弟、妻子、朋友のごときはもちろん敵ではないが、彼らが我々の心に服さぬことがあれば、その不服の範囲において敵のごときものである。ゆえに広い意味においては親兄弟にも勝たねばならぬ。楠正成の歌に、

我にかちみかたに勝ちて敵にかつこれを武将の三勝といふ

とあるのが、ちょうど僕の今いう勝つべき相手の種類である。

一時の勝利と永久の勝利

こういう礼治的社会は、まだまだ前途遼遠なる今日の社会においては、勝利を得れば足れりと思う人も、単にいわゆる現代的なるをもって足れりとせば、これ一時の勝利者にして、ながき奮闘には負けるものと言わねばならぬ。