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じけいろく
自警録
新渡戸 稲造
線上閱讀新渡戸 稲造《自警録(じけいろく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 168,224 字 · 328 頁
柔和の心は相手の柔和の心を抽き出す
権利とか名誉とか利益とかいうものであれば、他に握りようもあるか知らぬが、僕は人生の妙味とか真の幸福とかを重く思うから、むしろやわらかく握って、すなわち自分は引っ込む態度でなるべく人に譲るをもって人生の真味を味わい得るものと思う。
前にいった宗教家なる知人が、おとなし過ぎて惜しいと批評を受けたのも、もっともなことである。基督教のごとく、柔和を旨とする宗教にては、はでなことがはなはだ少ない、喧嘩も少なければ、議論も少ない。ドラマチックのことがはなはだ稀なるゆえ、世の見物人より喝采を受けることなくして世を過ごすが、しかしなお華麗に世を渡るよりはこの方がかえって人生の真味を味わわれると思う。
柔和の心は相手の柔和の心を抽き出す
かく人情の大体より考うるも、そうありそうに思われる。なんとなれば諺にも、「世は情け」という通り、人情が敦厚なれば、――もっと砕いていえば親切とか思いやりとか誠とかがあると、人世は美わしきもの、生ける甲斐あるもののように思われる。しかしてこれらの親切、思いやり、誠がどういうふうに現れるかというに、こちらの親切、思いやり、誠を現すと、その反響として相手方にも現れ出ることが多い。