輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

とうじゅうろうのこい

藤十郎の恋・恩讐の彼方に

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《藤十郎の恋・恩讐の彼方に(とうじゅうろうのこい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 37,146 字 · 74 頁

青空文庫

私は舞台の染之助から見詰められる事は、三浦之介なり、勝頼なり、勘平なり、義経なり、昔の美しい人達から、見詰められるような気がして、少しも悪い気持はしないのです。その中に段々染之助の見詰め方が烈しくなるのです。ただ、あの女は『俺のひいき客だから、見てやれ』と云う位ではなさそうなのです。日が経つにつれて、染之助の私を見詰めている眼付が、火のように燃えて来るのです。私は意外に思わずにはいられませんでした。そうして、私と染之助とは、舞台の上と下とで、始終じっと見詰め合いました。両方で見詰め合いました。私の見詰めているのは、染之助ではなくて、三浦之介とか重次郎などと云う昔のまぼろしの人間だったのですが、染之助はそうは思わなかったらしいのです。

ある日の事、私が何気なく見物していますと、一人の出方が、それはそれは見事なお菓子、今のような餅菓子ではなく、手の入った干菓子の折に入ったのを持って来て、

『これは、染之助親方からのお届物です』と云うのです。私はそれを聞いた時、舞台の上の美しい斎世宮――その時は、菅原伝授手習鑑が芸題で、染之助は斎世宮になっていたのです――のまぼろしが消えてしまってその代りにあの馬道で逢った蒼黒い、頬のすぼんだ小男の面影が、アリアリと頭の中に浮んだのです。