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とうじゅうろうのこい

藤十郎の恋・恩讐の彼方に

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《藤十郎の恋・恩讐の彼方に(とうじゅうろうのこい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 37,146 字 · 74 頁

青空文庫

入れ札と云う声を聴いたとき、九郎助は悪いことになったなあと思った。今まで、表面だけはともかくも保って来た自分の位置が、露骨に崩されるのだと思うと、彼は厭な気がした。十一人居る乾児の中で自分に入れてくれそうな人間を考えてみた。が、それは弥助の他には思い当らなかった。弥助も九郎助と同様に、古い顔であって、後輩の浅太郎や、喜蔵などが、グングン頭を擡げて来るのを、常から快からず思っているから、こうした場合には、きっと自分に入れてくれるだろうと思った。が、弥助だけは自分に入れてくれるとしても、弥助の一枚だけで、三人の中に這入ることは考えられなかった。浅太郎には四枚入るだろうと思った。喜蔵に三枚入るとして、十一枚の中、後へ四枚残る。その中、自分の一枚をのけると三枚残る。もし、その中、二枚が、自分に入れられていれば、三人の中に加わることは出来るかも知れないと思った。が、弥助の他に、自分に入れてくれそうな人は、どう考えても当がなかった。ひょっとしたら、並川の才助がとも思った。あの男の若い時には、可成り世話を焼いてやった覚えがある。が、それは六七年も前のことで、今では『浅阿兄、浅阿兄』