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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《赤ひげ診療譚(あかひげしんりょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,548 字 · 47 頁
「耳の穴をかっぽじれってんだ」与平が云った。
「おめえは新らしいことを云うよ」と小助がやじった。
「黙ってろ」と長次は制止し、井戸の中へ向かって、書き物を読みながら云った、「いいか、よく聞いてろよ、高田屋、――これはな、昔ここにあった武家屋敷の空井戸なんだ」
長次はそこで、与平が登に話したことを、もっと詳しく語ったが、女の子の年は六つ、井戸を塞いだのは木の蓋であった。
「いまから十九年まえの十月、日にちは十五日、おめえは四つの年だったが、この井戸へ落ちたんだ、いいか」と長次は続けた、「おめえは一粒種で、親御さんにとってはなんにも替えがたい大事な子だった、近所合壁の騒ぎになり、人を雇ってまで捜した、むろんこの井戸へも見に来たろうが、どうしてもわからねえ、神隠しか人さらいか、占ってもらったり加持祈祷もやった、それでも行方がわからねえ、おめえのおふくろさんは気おちがして病気みたようになるし、おやじさんもすっかり諦めちまった、人にさらわれて遠国へいったか、死んじまったもんだと諦めた、ところが四日めに、この長屋の者がおめえをみつけたんだ、そうでもねえ念のためだといって、綱を着けて中へおりてみた、するとおめえはその井戸の底、――いまおめえのいるそこに倒れていた、助け出して医者に診せたが、医者はだめかもしれねえと云ったそう