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しぜんかいのきょぎ
進化と人生(下)
丘 浅次郎
線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(下)(しぜんかいのきょぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 頁
子供が言葉を用いるにあたっては、ただ差別をいい現わすだけで、別に境界があるかないかは考えていない。腹が痛むとか、背がかゆいとか、足をくじいたとか、膝をすりむいたとかいうて、不便なく意を通じているだけで、腹とはどこからどこまでをいうか、腹と背との境はどこにあるか、どこまでが膝の領分でどこから先が、足の範囲かというようなことはまるで考えずにいる。子供は物の名を単に他と区別するための方便として用いているが、こうしている間ははなはだしい誤りは生ぜぬ。しかるに人間が哲学をやり始めると、そのままでは承知せず、必ずひとつひとつの言葉に定義を下さずにはおかぬが、これはよくよく誤謬の始まりである。なぜというに定義を造ることはすなわち境界のないところに便宜上境界を定めることであるが、これを用いつづけている間にはかかる境界が初めから存在していたかのごとくに思い込みやすい。解剖学の書物を開いて見ると人体の表面を若干の区域に分け、赤い線でいちいち、その境界を画き、上腹区、中腹区、下腹区、乳腺区、胸骨区、前頸区などと各区域に名称がつけてあるが、実物の人体の表面にはむろん何の境もない。