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もん

門

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《門(もん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,830 字 · 278 頁

青空文庫

そうして給仕をしてくれる御米の顔に、多少安心の色が見えたのを、嬉しいような憐れなような一種の情緒をもって眺めた。

「昨夕は驚ろいたわ。どうなすったのかと思って」

宗助は下を向いて茶碗に注いだ茶を呑んだだけであった。何と答えていいか、適当な言葉を見出さなかったからである。

その日は朝からから風が吹き荒んで、折々埃と共に行く人の帽を奪った。熱があると悪いから、一日休んだらと云う御米の心配を聞き捨てにして、例の通り電車へ乗った宗助は、風の音と車の音の中に首を縮めて、ただ一つ所を見つめていた。降りる時、ひゅうという音がして、頭の上の針線が鳴ったのに気がついて、空を見たら、この猛烈な自然の力の狂う間に、いつもより明らかな日がのそりと出ていた。風は洋袴の股を冷たくして過ぎた。宗助にはその砂を捲いて向うの堀の方へ進んで行く影が、斜めに吹かれる雨の脚のように判然見えた。

役所では用が手に着かなかった。筆を持って頬杖を突いたまま何か考えた。時々は不必要な墨を妄りに磨りおろした。煙草はむやみに呑んだ。そうしては、思い出したように窓硝子を通して外を眺めた。外は見るたびに風の世界であった。