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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁
武蔵が無条件で臨む筈はない。彼は敵の配置をたしかめて知っていた。そうすると、京都から約束の場所へ来るにしても、彼らの備えている道を避けたことは当然である。――そう推理的にここの地勢を見てゆくと、武蔵があるいて来た道は、どうしても山づたいよりないことになるのである。
もう白い星が洛内にまたたいている。僕は振り顧って、八大神社のうしろを見た。展望のきく前の視野の広さとちがって、背を振り向くと、そこはもう暮れて真っ暗な一乗寺山が自分の眉へ触れそうに近い。そして八大神社からもっとそこの山へ向って歩けば、山ふところを横に伝わって、鹿ヶ谷の方面へも、また東山や京都の市中へも降りることができる。
武蔵は、山道を迂回して、敵の頭にあたるこの詩仙堂の上へ出て来たのではあるまいか。慶長のその頃には、石川丈山はまだそこに住んでいなかったが、八大神社はもっと神さびた拝殿や玉垣を持っていたかもしれない。いやここの社記に依らなくとも、この神社の地域の広さ、鳥居の大きさ、また縁起の年代が古いことなどに依っても、それは推定して間違いはないことだろうと自分は思った。
そしてここから静かに下り松を見る。