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ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁

青空文庫

とすると、実は絶好な足場なのである。高い土地から敵の背面を衝いて、突如と彼らの本陣へ直進することができる地は、もう宵の真っ暗な風につつまれた附近を見まわしても絶対にここの山腹よりない気がする。

(――八幡神社と二天記にある記録は、八大神社のまちがいじゃないかなあ?)

自問自答しながら山を降りて、ここの地形と下り松をスケッチ帖へ写そうと思ったが、修学院をぐわらぐわら帰ってゆく農家の車やトラックの往還に、もう晩だという往来中に立って鉛筆も舐めていられない気がしたので止めてしまった。けれど、そこの地を実際に踏んだがために得た構想は、後で小説を書く時になって、必然、地理ということが、史実の乏しい事件を、史実に不忠実でなく、しかも細致に書くという仕事の重要な基本となるわけであるから、なぜざっとでも写生して来なかったかと後悔した。で、帰京後、陶工家の河合卯之助氏へ手紙を出して、もいちどそこを歩いてもらい、絵もうまい同君の手で一乗寺地形図と下り松遺跡の図と、二枚の写生をしてもらって東京へ送ってもらった。まだ紙上の小説はそこを書くまでには行っていないが、時々それを机上にひろげて、武蔵のあるいた足どりを推考していると、いつのまにか自分が歩いた半日の追想になって、あんな散歩のしかたも稀にはいいなと思うのであった。