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ずいひつ しほんたいへいき

随筆 私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 私本太平記(ずいひつ しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,947 字 · 114 頁

青空文庫

その時代の下に生きた一個の家庭の父、一個の人間、社会人として、どう描きうるかがまずさしあたっての苦吟である。人間尊氏を私はやはり人間的な気の弱さや人のよさを多分にもった人だったと思っている。正成にしても、そうである。みんな社会、みんな周囲が、彼をしてやむなくさせなければ、河内の一田舎武人として、よい妻やよい子にかこまれ、垣の梅花を楽しんだり、老後は菊の花でも作って、しごく平凡にまた平和に天寿を全うしたろうにと思われる。その点、かの日柳燕石が、楠公の詩に「過マツテ武人ニ生レ」と歌っているのは、偶像楠公にいささか人間の待遇を以て涙しているもので、今の私たちに共鳴される。いずれにせよ、高ノ師直のごときは変っているとしても、人みな善人だったと思う。それが、建武年間、正平以後にかけてまで、半世紀余の血みどろを地上に現じ出してしまったのは、いったい誰の所業か、何の作用か、私は人間同士の住むこの世には、何か「誰」と指摘できない摩訶不思議な素因がどこかに跳梁している気がしてならない。

小説の中では、そんなものをも、つきとめてみたい意欲がするのである。だがそれは、文芸の徒の文芸思惟などでは遠くとどかない永遠の問題であるかもしれない。