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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 頁
これは例の山※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)が他の赤児を攫って行くに相違ない。対手が対手だから大抵の事は見逃して置くが、人間を攫って行くのを唯打捨って置く訳には行かぬ。其当時の事だから、祖父さんも腰に刀を佩していたので、突然にひらりと引抜いて、背後から「待てッ」と声をかけた。対手は振返って屹と此方を視たが、生憎に月を背後にしているので其顔は能く判らなかった。」
「顔は判りませんでしたか。」と、市郎は失望の息を吐いた。
「顔は判らなかったが、暫時は此方を睨んで居たらしかった。が、何分にも此方は長い刃物を振翳していたので、対手も流石に気怯れがしたと見えて、抱えていた赤児を其処へ投り出して、直驀地に逃げて了った。」
「何地の方へ……。」
「あの山の方へ……。」と、安行は北を指さして、「勿論、飛ぶように足が疾いのだから、到底追い付く訳には行かない。そこで、祖父さんは其の赤児を拾って帰って、燈火の下で熟視ると、生れてから十月位にもなろうかと思われる男の児で、色の白い可愛い児であった。いずれ近所の人の児であろうと、明る朝方々へ問い合わして見たが、この駅では小児を奪られた者は一人も無い。