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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 頁
(十)
(十)
お杉が評判の美人であるにも拘らず、盛を過ぎるまで縁遠いに就ても、山里には有勝の種々の想像説が伝えられた。其中でも、彼女は蛇の申子で、背中に三つの鱗が有るということが、一般の人々に最も多く信ぜられていた。
お杉は重蔵に比べると、殆ど十歳ばかりの姉であったが、何時か此二人が狎馴染んで、一旦は山の奥へ身を隠した。お杉の家でも驚いて、そこの森や彼処の谷合を猟り尽した末に、一里ばかりの山奥にある虎ヶ窟という岩穴に、二人の隠れ潜んでいるのを発見して、男は主人方に引渡され、女は実家へ連れて戻られたが、其の翌る夜に二人は又もや飛び出した。今度は他国へ遠く奔ったらしい。遂に其行方を探り得なかった。
それから十年ほど経つ中に、お杉の家は死絶えて了った。二人の名も大方忘れられて了った。然るに某日のこと、樵夫が山稼ぎに出かけると、彼の虎ヶ窟の中から白い煙の細くるのを見た。不思議に思って近寄って窺うと、岩穴の奥には怪しい女が棲んでいた。十年前に比べると、顔容は著るしく窶れ果てたが、紛う方なき彼のお杉で、加之も一人の赤児を抱いていた。驚いて其仔細を訊したが、彼女は何にも答えなかった。