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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 頁
が、あれと云う間に又朦朧と消えて了った。
「何だろう。」
「兎も角も行って見ましょうか。」
好奇心に駆られた二人は、松明を振廻しながら更に降った。
「ここらでしたね。」と、巡査は的も無しに又もや松明を振廻すと、忠一も四方を照して視た。が、ここぞと思う辺には何物をも見出さなかったので、二人は失望の顔を見合せて立った。
「不思議ですね。」
「何うも不思議ですね。」
鸚鵡返しの声が終らぬ中に、忠一の持った松明の火先が左へ揺れると、一間許り下の大岩の間に又もや金色が閃いた。
「あ、彼処だ。」と、二人は跳って飛び降りた。岩は宛ら獅子が口を明いたような形で、其の喉とも云うべき奥の処から、怪しき金色の光を発するのであった。二人は松明を差付けて窺うと、これは意外、幾百年を経たりとも見ゆる金の兜であった。
山※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)の棲家に金の兜を発見するとは、豚小屋から真珠を掘出したようなもので、何人も想像の及ばぬ所であろう。歴史の智識に富んでいる大学生は、早くも之を鎌倉時代の物と見た。五枚錣の大兜、これが火の光に映じて輝いたのであった。それにしても、こんな貴重な物が何うして此処に隠してあったのか。