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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 頁
で、一旦は其奇遇に驚いたが、今は其んなことを詮議する場合でない。彼は頼まるるままに角川家へ使する意で、兎も角も窟の外へ走り出た。
外へ出ると、又もや重太郎に逢った。が、これも相互に顔を見識らなかったので、二十年振で初めて邂逅った現在の父と子が、此に忽ち敵となった。二人は引組んだままで崖から転げ落ちると、下には幸いに熊笹が茂っていたので、身体には別に怪我もなかった。けれども、格闘は此のままに止まなかった。二人は此で又もや組討を始めたが、若い重太郎は遂に老たる父を捻伏せた。彼は母の仇と叫びつつ、持ったる洋刃を重蔵の喉へ差付けたのである。
急所を刺された父は殆ど気を失って倒れた。重太郎は恐く何処へか立去ったのであろう。それから塚田巡査に発見されるまでは、重蔵も夢心地で何にも知らなかった。
老たる浮浪者の懺悔は之で了った。
「私も女房や子を捨てて逃げました。友達を殺して逃げました。それだけの罪でも碌なことの無いのは当然です。二十年振で現在の子に邂逅いながら、其手に掛って殺されると云うのも自然の因縁でしょう。斯う何も彼も白状して了えば、私は人殺しの犯人ですから何うせ無事には済みますまい。