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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 頁

青空文庫

が、何しろ暗いので始末が悪い。

「早く燈火を持って来い。燈火を……燈火を……。」と、市郎が呼んだ。

雪は降っても未だ宵である。入口の爐を囲んでいた人々は、この声を聞いてばらばらと起って来た。或者は手に洋燈を持った。

「何です、何うしたんです。」と、皆口々に問うた。

「賊だ、賊だ。賊を取押えたんだ。」と、忠一は叫んだ。

「何、賊だ。」と、人々は眼を皿にして衾の周囲にどやどやと集った。重太郎は土龍のように衾の下で蠢くのであった。が、彼も流石に考えた。斯る始末となって多勢に取巻れては、到底本意を遂げることは覚束ない。一旦はここを逃げ去って、二度の復讐を計る方が無事である。と、斯う考えたので、彼は故意に小さくなって、宛がら死せるように鎮っていた。対手が温順いので、忠一も少しく油断した。

「燈火を此方へ出し給え。兎にかく何んな奴だか面を見て与るから……。」

云いつつ徐に衾を剥ると、待構えたる重太郎は全身の力を籠めて曳やと跳ね返したので、不意を食った忠一は衾を掴んだまま仰向けに倒れた。重太郎は洋刃を閃かして矗然と起った。と思うと、忽ちに人の袖を潜って、縁先から庭へひらりと飛び降りた。