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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 頁
お葉は唯ある岩角に腰を卸して、紅い木葉を弄っていた。
重太郎は漸々に熱して来たらしい、又飛蒐ってお葉の手を捉ろうとするのを、母は再び遮った。
「そんなことをすると、お葉さんに嫌われるよ。ねえ、お前さん。ここまで一所に来る位だから、肯いて呉れるのだろうね。」
「妾はそんな意で来たんじゃありません。」
「それじゃア何しに来た。」
「お前さんが呼んだから……。」
「呼ばれて来るからには、承知だろう。」
「いいえ。」と、お葉は頭を掉った。
併し斯うなると、お葉も我ながら判らなくなって来た。自分は何の為にここまでお杉に附いて来たのであろう。呼ばれたから来た……とばかりでは、余りに他愛が無さ過ぎる。何か他に相当な理屈が無ければならぬ。が、何う考えても夢の様で、何の為に悪所絶所を越えて斯んな処へ入込んだのか、其理屈は一切判らぬ。まだ酒に酔っていた故か知らと、無理に理屈を附けても見たが、それも何だか覚束ない様にも思われた。
酒の酔も醒め、ヒステリー的の発作も漸く鎮った今の彼女は、所謂「狐の落ちた人」のように、従来の自分と現在の自分とは、何だか別人の様にも感じられた。
お杉は又もや徐に問うた。