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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 頁

青空文庫

(三十二)

併し彼は死んだのでは無かった。其の眼前に蝋燭の火を差付けられると共に、又もやきゃッと叫んで跳ね起きて、血だらけの顔を抱えながら岩から岩へ、何処へか飛んで行って了った。

斯くして真実の※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)は逃げ去ったが、※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)類似の怪しい男は未だ眼の前に残っている。此男は果して善か悪か、敵か味方か、市郎も其判断に苦んで佇立んでいると、男は愈よ馴々しい。

「旦那、御心配なせえますな。※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)なんて云うものは、意気地のねえ奴ですから、もう蒐って来る気配いありませんよ。はははは。」

彼は勇士である。人の恐るる山※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)を物の屑とも思っていないらしい。

(三十二)

何しろ、得体の判らぬ男であるが、何時まで睨み合っていても際限がないと、市郎の口も解れ初めた。

「お前さんは此穴に棲んでいるのか。」

「そうじゃアありませんが、大抵勝手は心得ていますよ。」

「底までは未だ余ほど遠いかね。」

「何、もう直です。