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ぜにがたへいじとりものひかえ
鬼の面 ――銭形平次傑作選3
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《鬼の面 ――銭形平次傑作選3(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,312 字 · 57 頁
「この赤い酒に見覚えがあるか」
平次は顧みて、寮番の喜八に訊ねました。
「へエ、よく存じております。和蘭の葡萄で作った酒だそうで、三十年も五十年も経ったものだと申します。主人はことの外それが好物で、長崎や堺から、大金を出して取寄せておりました。まことに黄金の汗のように貴いものだと申すことでございます」
「この人もそれが好きだったわけか」
「伯次さんと来ては、日本一の珍らしい物好きで、駒形の御店でも、ときどきそれを盗んで呑んでは主人に叱られておりました」
話はそれでわかったようですが、平次はなおも伯次の死骸を調べ、土地の役人に引継いで、爺やを案内に、諏訪様の裏の寮に引返しました。
そこは、小さい寮ですが、なかなかよく調っており、贅沢さもまた非凡です。
いちおう調度に眼を通して、さて喜八に言って主人の戸棚を開けさせました。
「これが主人のお好みの道具、此方は誰にも手をつけさせないお酒で」
道具は他愛のないものでしたが、金持の道楽の馬鹿馬鹿しさよりも、人一人の命を取った、和蘭の赤い酒が平次には大事でした。
ギヤマンの瓶に入った、赤黒い酒、透して見ると、まだ半分は残って居るでしょう。